O様邸は一階が事務所で、二階、三階が自宅になっている
店舗併用住宅。
一日の仕事を終えると事務所のドアを開け、一旦外の空気に触れたあと、左手の自宅のドアをゆっくりと開ける。この瞬間に、気持ちはオンからオフに切り換えられる。
ステンドグラスが組み込まれた階段を上り重厚なドアを開けると、O様ご自慢のLDK空間が広がっている(仕事上のお客様をお招きする時は事務所からエレベーターで直接二階へ行けるようにもなっている)。
左手にはカウンターとキッチン。右手には大きな一枚板の座卓が目に飛び込んでくる。お店かと見まごうばかり。床も天井も黒を基調にしていながら巧みな照明の演出で暗さを感じさせない見事な空間に仕上がっている。
ご主人の希望は露天風呂のある暮らしと古民家風の生活空間。その希望の中核をなす古民家のイメージを大空間と昭和初期の調度品で造り上げたのがこのリビングダイニング。ご主人は「天井の黒も希望の色が出るまで数度塗り替えました」と、この言葉ひとつとっても、このLDKへのこだわりぶりが伺える。
この空間を使うのは夜が主体だから、しっかりくつろげる空間にしたいと言う希望で、あえて黒を基調に選ばれたようだが、昼間は大きな開口部からタップリの光が取り入れられ、夜の雰囲気とはまたひと味違う落ち着き感が演出されている。
3階には子供たちの個室のほか、浴室とそこから続く露天ジャグジー、小上がりの休憩室が配置されている。圧巻はなんといってもこのジャグージーに尽きる。住まいづくりの発端がそもそも「露天風呂のある暮らし」だったご主人。プランニングも露天風呂の位置から決められた。
設計者が悩んだのが、外の景色を楽しみながら人の視線を遮断する工夫だった。セキスイハイムでもこうした物件は初めてだったのでゼロからのアイデア出しが始まった。思案の末、京都の目隠しに使う格子がひらめいた。普通は縦並びに配置されている格子を横に寝かせることで、風を取り込みながらも視線は開放して星空を見上げられるというアイデアだ。
この目隠しになる格子板は取り外しが自由自在で、天候や気分によって調整することができるようになっている。また大型の浴槽の中にはLEDが組み込まれていて、湯色が時間と共に7色に変わってゆく。
湯に浸かる気持ちよさとイルミネーションの心地よい刺激が至福のひとときを演出してくれる。
となりには標準のバスも用意されていて、気分によって使い分けられるのもうれしい配慮だ。
ゆったりお風呂を楽しんだあとは隣の小上がりの休憩室へ。遠くの景色を見ながら、ゆっくりと汗が引くの待つ。この部屋は雨の場合には洗濯干場にも変身する便利な空間でもある。
外観には2トーンのタイル外壁をあしらい、シンメトリックかつバーチカルラインを強調するデザインにすることで伸びやかさを演出している。日が沈むとライトアップ用のLED投光装置がオンになり、白色のタイル外壁をカラフルにライティング。外を行き交う人たちの目を楽しませている。